ICカード式タイムレコーダーの導入ポイント
過剰労働やサービス残業による過労死などの危険性が叫ばれている昨今、労働基準法に則った勤怠管理が重要となっています。
一昔前は紙による打刻や自己申告などで労働時間の管理をしていましたが、最近ではクラウド型の勤怠管理システムや生体認証型のタイムレコーダーなど、種類や機能も大きく進化しています。
中でも、手持ちのICカードで勤怠時間の打刻や入室管理が行えるICカード式タイムレコーダーは人気が高くなっています。
今回は、ICカード式タイムレコーダーを導入するメリット・デメリットから、実際にタイムレコーダーを導入する際に知っておきたいICカードの種類・特徴、セキュリティにおける注意点や導入にかかるコストについてご紹介しましょう。
ICカード式タイムレコーダーとは
タイムレコーダーといえば、紙のタイムカードをレコーダーに入れて打刻するイメージが一般的です。しかし近年では、ICカードを用いたタイムレコーダーが販売され、その便利さから広く普及しつつあります。
ICカード式タイムレコーダーとは、ICカードで出退勤時間などの打刻を行うものです。
レコーダーにICカードリーダーが設置されており、このリーダー部分にICカードをかざして打刻します。
タイムレコーダー専用のICカードもありますが、それ以外の交通系ICカードやおサイフケータイ対応の携帯電話などでも打刻可能です。
従来のタイムレコーダーとの大きな違い
ICカード型タイムレコーダーではICカードをかざして打刻を行います。
そのため従来の紙ベースのタイムレコーダーと異なり、紙のタイムカードを人数分用意して一定期間タイムカードを保管する必要がありません。
また、ICカードで読み取ったデータは即時にPCなどに移動が可能なため、リアルタイムで出退勤状況を確認できます。
ICカード式タイムレコーダーを導入するメリット・デメリット
メリット
ICカード式タイムレコーダーを導入するメリットは複数あります。
1つ目は事務作業の時間コストの削減です。
打刻したデータはすぐにPCデータとして保存されるため、紙のタイムレコーダーのように月末にまとめてデータを転記する必要がありません。
2つ目に、リアルタイムで勤務状況が確認できるという点です。
退勤状況をリアルタイムで勤怠情報システムと連携させると、現在の出退勤状況が一目で分かります。勤怠管理を随時行えるので、不明点などが生じた場合もすぐに従業員に確認することができます。
月末にまとめてデータの整理を行うと、分からない部分が出てきてもデータの確認に時間がかかる場合がありますが、ICカード式タイムレコーダーなら随時確認できるので、その心配はありません。
紙媒体で管理しなくてよくなりますが、紙媒体で管理したい場合は簡単にデータが印刷できるのも魅力ですね。
デメリット
一方デメリットとしては、データの紛失対策とセキュリティ管理が挙げられます。
勤怠情報が電子データになっているため、紛失すると一度に大量の情報がなくなる恐れがあります。
データをなくしたり壊したりした場合に備えて、バックアップを複数とるような環境を整えましょう。
また、データを管理しているPCがウイルス感染したり、何らかの理由でデータが外部に流出することがないように、PCおよびデータを扱う人のセキュリティ対策をしっかりと行うようにしましょう。
ICカードの種類(接触型・非接触型)と特徴の違いとは
電子マネー系ICカードや交通系ICカードなど、日常生活でICカードが急速に普及しています。
これらのICカードにはどのような種類と特徴があるのでしょうか。
ICカードの種類とは
ICカードはハード面で大きく2つに分類されます。
- 接触型ICカード:専用のリーダーに直接差し込んでICカードの情報を読み取る
- 非接触型ICカード:ICカードの情報を電磁界を利用して無線で読み取る
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
接触型ICカードの特徴
接触型ICカードはカード内に電極とICチップが埋め込まれており、このICチップ内に多くの情報を保存できます。
データを読み取る時は、接触型ICカードリーダーにカードを差し込んで直接ICチップからデータを読み取ります。
リーダーがカードに接触してICチップ情報を読み込むことから、クレジットカード決済など高い認証セキュリティが必要な場面で利用されています。
非接触型ICカードの特徴
非接触型ICカードは、カード内部に電磁場を作るコイルが内蔵されています。
ICカードを使う際はカードリーダーにカードをかざすかタッチしますが、この時リーダーで発生させた磁界を利用してデータを読み取り無線でデータを送信します。
交通系ICカードや電子マネー、おサイフケータイなど私たちの身の回りにあるICカードのほとんどが非接触型ICカードです。
非接触型ICカードは通信方式の違いや規格によって、MIFARE・Type B・FeliCaの3種類に分類されます。
MIFAREとはType Aとも呼ばれる世界で最も普及している規格で、ロンドンや北京などでは交通系ICとして、日本ではたばこカードのtaspo(タスポ)に採用されています。
安価で手に入れやすいというメリットがあります。
TypeBにはICカードに必ずCPUが搭載されています。
そのため、住民基本台帳カードやIC運転免許証など公的な場で使用される傾向にあります。
FeliCaは日本企業のソニーが開発したこともあり、日本で最も普及している規格です。
情報処理の速度が速いことから、交通系ICカードや電子マネーなど私たちの日常生活で頻繁に活用されています。
企業の勤怠管理方法として使用されるICカードとは
ICカードには様々な種類があることが分かりましたが、ICカード式タイムレコーダーではどのICカードが使われているのでしょうか。
一般的なICカード式タイムレコーダーでは、非接触型ICカードのMIFAREとFeliCaを読み取ることができるリーダーが使われていることが多いようです。
特にMIFAREは、導入コストが他と比べて安価に済むというメリットがあります。
また、FeliCaではおサイフケータイや交通系ICカードを利用できるので、複数のカードや端末に対応できるメリットがあります。
ICカード式タイムレコーダーを導入する際は、使用できるICカードの種類も確認するようにしましょう。
ICカード認証のセキュリティ面における注意点とは
運転免許証や電子マネー、交通系ICカードなど私たちの日常生活にICカードは欠かせないものとなっています。
しかし、便利だからこそ心配になるのがセキュリティ面です。
ICカードのセキュリティとは
ICカードでは内蔵されたICチップの中にデータを記録していきます。
このICチップのデータをICカードリーダーが読み取る際に、データが漏えいしないよう様々なセキュリティが設けられています。
セキュリティの1つに、ICチップのデータ読み取りをCPUが制御する耐タンパ機能があります。
また、ICカードとICカードリーダーでデータをやり取りする際にセキュリティキーを用いてやり取りするものもあります。
ICカードの種類によって設けられているセキュリティは様々ですが、磁気カードと比較するとICカードのセキュリティは堅牢にできており安全性が高いと言えます。
ICカード認証システム導入時に考えられるセキュリティ問題とは
ICカード認証を利用する際に、セキュリティ面で生じ得る問題としては以下の3点が挙げられます。
- ICカードそのもののセキュリティ
- ICカードを利用する人のセキュリティ
- ICカードから送信したデータのセキュリティ
1つ目のICカード本体のセキュリティについては、前述した通りかなり安全性が高いものとなっています。
しかし、厚みの薄いカードにICチップが内蔵されているため、ICチップ部分が折れたりするとデータが破損する恐れがあります。
2つ目の利用者のセキュリティ問題ではICカードの不正使用などが挙げられます。
ICカードを故意に他人に貸したり、紛失したまま放置することでカードを不正利用される恐れがあります。
ICカードを紛失した場合は速やかにICカード停止手続きをとるよう義務づけたり、ICカードの所有者が不正使用に加担しないよう啓発する必要があります。
3つ目はICカードによって得られたデータの漏えいなどの問題です。
ICカードにセキュリティをほどこし、所有者もICカードを正しく使って得られたデータであっても、データを管理するPCのセキュリティが甘いとデータが外部に漏えいする恐れがあります。
データを管理するPCソフトのセキュリティ対策を十分に行い、データを扱える人を限定するなどの対策を行いましょう。
ICカード認証で勤怠管理を行う際のセキュリティ対策
ICカード認証で勤怠管理を行う場合は、主にICカードによる出退勤時間の打刻や入室管理、会社PCへのログインを行うことが想定されます。
勤怠管理を行う際にセキュリティ面で生じる問題としては、ICカードの所有者以外が不正に打刻するケースと勤怠管理データの漏えい・紛失するケースが挙げられます。
ICカードで勤怠管理を行う際は、就業規則などで不正利用および紛失時の対応を決めておきましょう。
また、勤怠管理データの扱いについては、管理PCのセキュリティ対策を行うようにしましょう。
例えば、PCのアクセス利用者の記録・管理やICカードごとにログインID・パスワードを設定するなどがおすすめです。
以上のようにICカード認証による勤怠管理を行う際は、セキュリティ対策をしっかり行い高い安全性の元で運用するようにしましょう。
ICカード式タイムレコーダーの価格と導入コストとは
ICカード式タイムレコーダーの導入を検討するのであれば、導入費用や維持コストが気になるところです。
ICカード式タイムレコーダーの導入時に必要となる機器や、そのコストついて見ていきましょう。
ICカード式タイムレコーダーの導入に必要な機器について
ICカード式タイムレコーダーを導入する際は、いくつか機器をそろえる必要があります。
必要な機器は大きく分けて①打刻用ICカード、②ICカードリーダーとタイムレコーダー、③勤怠管理ソフトの3点になります。
打刻用ICカードは新規にICカードを用意する場合と、現在従業員が持っている交通用ICカードなどを打刻用に使う方法があります。
すでに何らかの形で社員にICカードを支給している場合は、それを打刻用として活用しても良いでしょう。
タイムレコーダーとICカードリーダーが一体化したタイプや、タイムレコーダーを使用せずICカードリーダーとPCを接続するタイプがあります。
また、ICカードで打刻したデータを分析・整理するのに便利なのが勤怠管理ソフトです。
すでに使用している勤怠管理ソフトがある場合や、打刻データだけ欲しい場合には新しく勤怠管理ソフトを購入する必要はありません。
ICカード式タイムレコーダーの導入時にかかるコスト
ICカード式タイムレコーダーを導入する場合の機器にかかるコストを見ていきましょう。
まずはICカードです。
新しくICカードを導入する場合は、ICカードの種類によって費用が異なります。
MIFAREでは1枚300円程度、FeliCaでは1枚400円程度のコストがかかります。
ICカードは注文数やICカードに印刷を行うか否かでプランが異なるため、複数のプランを比較することをおすすめします。
ICカードリーダーとタイムレコーダーですが、一体型のものは10万円程度の価格帯が多いです。
ICカードリーダー単独の商品は1万円以下からありますが、別途接続するためのPCが必要となるのでPCを導入するコストもかかることを頭に入れておきましょう。
最後の勤怠管理ソフトにかかるコストは様々です。
クラウド型の無料で展開しているものから、パッケージタイプで10万円以上かかるものもあります。
一般的に高機能なものほど高価になるので、会社の規模やニーズに応じて選ぶようにしましょう。
ICカード式タイムレコーダーの導入後にかかるコスト
IC式タイムレコーダー導入後はどれくらいコストがかかるのでしょうか?
上記に述べたようにICカード式タイムレコーダーは導入時にコストがかかります。
全て新しくそろえた場合を考え、ICカード25枚で1万円、タイムレコーダーで10万円、勤怠管理ソフトを10万円購入したと仮定すると導入時に21万円必要になります。
しかし、その分導入後にかかる事務作業のコストは安くなります。
データ入力や計算を自動で行ってくれるので、事務作業はほとんど必要ありません。
1ヵ月分の集計確認作業で2時間かかるとして、時給1,000円の事務員1名で行うと2,000円になります。
では、従来のタイムカード式のタイムレコーダーではどうでしょう?
タイムレコーダー本体の価格は約2万円なので導入時コストは2万円になります。
導入後のコストとしては、タイムカードが1枚10円として25名の会社だと毎月250円かかります。また、手作業で打刻データを入力・集計するのに1週間かかると仮定すると、時給1,000円の人が8時間×7日間作業すると56,000円コストがかかります。
5ヵ月継続すると56300×5=281,500円となり、タイムレコーダーの導入コストを上回ります。
長期間使うことを考えれば、ICカード式タイムレコーダーの方が全体のコストが低くなるケースもあるので、毎月の作業が多いというお悩みを抱えているのであればICカード式タイムレコーダーの導入も視野にいれてみましょう。